鍼灸師えみすけのブログ

住吉区のママ鍼灸師 えみすけのブログ

大阪市住吉区で鍼灸治療をしている、鍼灸師えみすけ(長崎絵美)のブログです。

瘀血(おけつ)って何?最新医学の観点から、難病の発生機序を知る

先日、日本東洋医学会の第69回学術集会に参加してきました。

この学会は、医師・薬剤師・鍼灸師などがそれぞれの立場から東洋医学の見聞を広めるというもので、今回初めて参加させていただきました。

 

数々の学びがありましたが、その中でも特に印象深かったお話をひとつ。

 

大阪府にある、いしい皮膚科クリニックの石井正光先生による講演

「瘀血は何故難病を生むのか?~見えてきた生体クリーニング機構の破綻~」

 

これがもうめっちゃくちゃおもしろかったのでレポート書きます。

 

 

 

瘀血ってなに?

瘀血は「おけつ」と読みます。東洋医学の概念の一つです。

血のよどみ、血の滞りと考えられていて、瘀血があると身体は不健康であるとされます。

 

自分に瘀血があるかどうかの判断として、わかりやすいのは舌の色。

健康な舌はピンク色ですが、青紫色をしていたり、舌をめくったときに

裏側に舌下静脈の怒張が見られて青い血管がはっきりわかるのであれば要注意。

 

タバコ・脂っこい食事・ストレス・運動不足などで徐々に体に蓄積されていきます。

瘀血があると、痛みがきつくなったり、皮膚の色がわるくなったり、できものができたりします。生理痛や婦人科疾患なども瘀血が関係すると言われています。

 

 

この瘀血、西洋医学をもってしてもなかなか緩解していかないような、いわゆる難病には必ず存在するといわれていて、患者さんの瘀血をなくすことは、医療者にとっても重要な課題です。

 

 

今回、石井先生がおっしゃっていたのは

 

「皮膚の間質で見られる瘀血の病態は、あらゆる臓器組織を通じて適応されるべき循環障害に伴う病態である」

 

ということでした。

 

これだけだと難しくてよくわかりにくいので、順を追って解説します。

 

 

乾癬と瘀血

※画像はすべて石井先生のスライドからの転載です。

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左が、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)という病気の患者様の背中。

右が完治したあとの背中です。

 

乾癬は、全身の皮膚にこういった紅斑がみられ、痒みも伴います。

周囲の皮膚は固くなり、見た目も気になるので、一刻も早く治したい病態です。

この乾癬の治療に、瘀血が関係しているのではないか?と考えた、皮膚科の石井先生。

 

 

瘀血とは慢性の炎症であるとし、

瘀血を消すために桂枝茯苓丸、慢性炎症を抑えるために温清飲という漢方を

それぞれ処方したところ、有効率が79%であったという論文を書かれました。

 

さらに、体内の脂質代謝異常や、過剰な肉食による代謝異常なども病気の要因と考えられるので、食事制限や防風通聖散の内服も必要であると説いています。

 

乾癬の重症度が高いほど、メタボリック症候群を併発する率が上がるというデータもあり、肥満はそれだけで炎症である、ということも結論づけられていました。

 

 

人間の末梢の細胞は常に入れ替わっていて、新しいものを取り入れて古いものを出す、というサイクルで動いていますが、ここの流れが澱むと炎症を起こすと考えられるのです。

 

つまり本当に大切なのは「代謝産物を処理する機構」。

どれだけ体内をきれいにおそうじできるかにかかっているのです。

 

 

生体内クリーニング機構の重要性

わたしたちが「排泄」ということを考えたとき、真っ先に思いつくのは

尿や便だと思います。

 

あとは呼吸でも息を吐きますし、汗もかきますし、唾液も出ます。

爪や髪は伸びていきますし、皮膚からは垢が出て、剥がれていきます。

これらはすべて、体の中のおそうじ機能なのです。

 

 

もっとミクロな世界では、

細胞や組織にからみつく小さな老廃物や毒素のおそうじが行われています。

(微小物質クリーニングといいます) 

 

このおそうじ機能が弱ると、当然細胞内に汚れがたまったままになり

汚れている細胞は、きちんと働かなくなってしまいます

 

 

さらに、

細胞同士は本来、会話していて、情報交換を密にしているんですが・・

NHKの「人体」シリーズでも解明されていましたね)

 

 

体内が汚れていると、その情報交換すらうまくいかなくなってしまい、

細胞の誤作動が始まります・・!

 

(例:おなかいっぱいなのに、満腹だよ!というメッセージが伝わらずにいつまでも食べ続けてしまうとか)

 

 そして細胞の機能も障害されるので、そこから病気が生じると考えられます。

 

 

身体の中に瘀血がある、ということはつまり

 

この生体内クリーニング機構がきちんと働いていない状態だと言い換えていいと思います。

 

 

血液循環のうち、本当に大事なのは間質液と毛細血管での栄養交換である

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わたしたちの身体には血が流れています。

この血液が流れる血管は、動脈・静脈・毛細血管に分類されます。

 

酸素をたくさん含んでいるのが動脈、

二酸化炭素や不要になった物質を含んでいるのが静脈。

そしてこの二つの血管は、毛細血管という細い血管で物質交換をしています。

 

 

画像にもあるとおり、人の身体の血管の99%は毛細血管。

全身に、ほそーい血管が張り巡らされています。

「血行を良くする」という表現をよく使いますが、これは主に毛細血管の血行を良くしているということなのですね。

 

 

この毛細血管には無数の穴があいており、そこから血漿成分(血液の中から赤血球や白血球などを除いた液体部分)が出入りしています。

ここから出た液体は「間質液」といって、とってもとっても重要な役目を果たしてくれているのです。

 

 

たとえば体重65㎏の人を例に挙げると

動脈の流れる血液は1.5リットル、静脈に流れる血液は3リットルだそうですが

(静脈は、血を貯めておく機能があるため動脈より多くなります)

間質液はというとなんと11リットルも存在するんですって。

 

 

なのに、今まではあんまりこの間質液に注目して何かが議論されたことはあまりないそうで、ここは石井先生も特に強調されていました。

 

 

間質液が何をしてくれているかというと

 

・ほとんどの細胞に栄養を与えてくれる

 (血管から遠いところにも、液体だから滲みだしていける)

・細胞からメッセージ物質を受け取ってくれる

・間質の汚れをとってくれる

 

だそうです。

先程の生体内クリーニング機構の働きは、この間質液が担ってくれているんですね。

そして、おそうじだけではなく、細胞や臓器のコミュニケーション通路としても役割を果たしている。

 

間質液すごい!えらい!!ということです笑

 

 

「気血水の乱れ」は細胞レベルで起こっている

わたしたち鍼灸師や、医療に関わる仕事の人たちは、国家資格を取るための必須科目として生理学を勉強します。

 

このとき、「〇〇細胞はこんな作用があって~」というふうに本に書いているので

わたしたちは素直にそのまま覚えてしまいます。

 

 

しかし、石井先生はこれは洗脳であると言い切ってました。

 

 

「教科書に載ってるのは、体がきれいな状態の時の話や。

栄養をきちんと受け取ってる細胞と、泥水に囲まれてる細胞では、

そもそも働きも全然違ってくるんです。

身体に瘀血があると、細胞は本来の働きができてません。死んでるみたいなもんです」

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↑泥水\(^o^)/

 

 

 

身体に瘀血があると、間質液はその作用がにぶります。

つまり古い細胞や不要な物質をおそうじしてくれる作用も弱まるということ。

そうすると間質液は汚れでいっぱいになり、泥水状態になるんですね。

 

 

皮膚で考えると、

 

表皮と真皮の間には間質液が流れています。

 

この時、身体がきれいな状態であれば

皮膚を軽く押すだけでも、その圧力で間質液が入れ替わり、

細胞への栄養供給がなされるため、美肌になるのです。

(つまり、刺さない鍼でもお顔がキレイになるってことですよー!)

 

 

でも、もし間質液が汚れていたら・・

 

「もともとは細菌を貪食してくれるはずの肥満細胞が、少しの刺激ですぐにヒスタミン出しよるよ。ちょっと皮膚に触れても、あっためただけでも、蕁麻疹出るよ」

と石井先生。

 

ヒスタミンっていうのは痒みのもとになる物質です。

 

確かに、ちょっとのことですぐに皮膚が赤くなったり蕁麻疹が出たり

痒くなったりする人いますよね。そういうのには瘀血が関わっているんですね。

 

 

間質液が汚れていると

新しく生まれた新品の細胞すら、ちゃんと働いてくれません

それどころか、誤作動を起こし、間違った情報を他の臓器に伝えちゃう。

 

 

これが瘀血の正体なんです。

 

 

 

血管の中だけ循環が良ければいいわけじゃない。

血管の外の間質液・リンパ液も含めた循環もしっかり考えましょうということです。

 

 

ちなみに今年に入り、こんなNEWSも飛び込んできました。

www.cnn.co.jp

 

これまで、人体最大の器官は「皮膚」であるとされてきましたが

それを超える最大の器官として「間質」「間質液」を臓器にしよう!という発表です。

 

これまでも間質や間質液はもちろん存在として知られていましたが、

ざっくり言えば、

「こいつけっこう大事なことしてるんじゃね?」ということでみんなに見直されて、臓器に格上げされたということです。

 

おめでとう間質。

 

世界の目がどんどん間質液に向いている・・ということを裏付けるニュースですね^^

石井先生も喜んでおられました(笑)

 

 

鍼灸が瘀血に対してできること

ここからはわたしの感想です。

 

日々臨床をやっていると、瘀血があるだろうな~という方は非常に多いです。

問診でもわかりますし、皮膚のかんじでもだいたいわかります。

あと、さっき言ってた舌でもわかりやすいですね。

 

この瘀血、早めに身体からなくしていかないと、それこそ病気になってしまいます。

 

 

鍼灸治療を受けると、血行が良くなります。

これは、血管内だけではなくて、血管外でもおんなじ。

つまり毛細血管⇔間質液での物質交換をスムーズにするということです。

 

細胞に酸素を与えることで、老廃物をきちんと処理できるようにして、

間質液をきれいにするお手伝いができます。

 

 

鍼灸は、細胞レベルで人の身体を健康にすることができるのです。

 

 

もちろん、細胞の汚れ具合や病気の進行度によっては

鍼灸治療をしても追いつかないこともあります。

 

でも、西洋医学の治療と併用して鍼灸を受けてもらうことで

薬の副作用をやわらげたり、薬の成分を早く末梢に届けることもできます。

(内科医で、漢方とお灸を実施されている先生がおっしゃってました)

 

あらためて、わたしって良い職業選んだな~!!!って興奮しました!笑

 

 

瘀血は、やっぱり何らか「無理してる」人にできやすいです。

しんどいな、とかイヤだなって感じたときに適切に休めていなかったりすると

疲労が蓄積しますよね。

 

それが積もり積もって、身体のバランスが崩れてくるイメージです。

 

鍼灸治療を受けよう!と思う人はだいたい

まず薬で対処して、病院に行っても解決しなくて、ずっと我慢して、

それでも悩みが消えなくて来院される方が多いです。

 

つまり、不調になってからけっこう時間が経過しているんですよね。

 

身体には恒常性というものがあって、状態を一定に保とうとする働きがあるので

治療してもそんなにすぐには変わりません。

でも、続けていれば確実に身体が変わってきます。

 

 

あらゆる病気のもとになる瘀血。

これ、わたしにもあるんじゃない・・?と不安な方は

ぜひ早めに鍼灸治療を受けてみてくださいね!^^